ムカデと幼児
今年もムカデの時期がやって参りました。
昨年まだまだ新築に近い我が家の洗面所に奴が現れて以来、梅雨前にムカデ対策をすることにしています。
ハッカオイルを薬局で購入して手作りのムカデよけスプレーを作って網戸に吹きかけたり、家の周りを市販の置くタイプのムカデ駆除剤で囲ったり。
我が家、外遊びが大好きな幼児と乳児がいるのでそこにも配慮した商品を選んでいます。
それがなければもっと強力な薬を使いたいところです。笑
さて、そういう対策のおかげかその駆除剤を食べて痺れて動きが悪くなっているムカデを時折庭で発見します。
実家ではわたし以外の家族がムカデに噛まれ、大変な目にあっているのを目の当たりにしていたので、ムカデをみたら駆除(殺す)が常識。
その日もそんなムカデを見つけたのでためらいもなく、その場にあった園芸用のスコップで叩きつぶしました。
しかし、その程度で死ぬ奴ではありません。
玄関に置いている殺虫スプレーでとどめをさそうとムカデから離れた時、我が家の幼児がムカデを触ろうと近づいたのです。
「こら!触ったらあぶないでしょ!!」
思わず大声で叫ぶと、
みるみる口をへの字に曲げてうわーん!と泣き始めました。
とにかく、ムカデが幼児を噛んだら大変だ。
わたしはすばやく殺虫スプレーを持ち出しムカデにとどめを刺したのち、幼児に語りかけた。
「大きな声を出してごめんね。でも、ムカデがあなたを噛んだらとても痛いのよ。あぶないの。だから触らないように怒ったのよ?」
3歳が理解するかはわからなかったが、あぶないという言葉はわかっているはずなのでなだめるように話しかけた。しかし、幼児は泣き続ける…
そんなに怒ったのが怖かったかなー、、、
幼児が泣き続けるのでどうしたものかと考えていたが、そこで、とある仮説がわたしの中に浮かんだ。
そして、それを幼児に問いかけた。
「もしかして…ムカデを殺したのが悲しかったの?」
わたしの問いに幼児は瞳から大粒の涙をこぼしながら
「うん」と答えた。
衝撃だった。
そしてわたしの中にはあの歌がこだました。
♪「みみずだってーおけらだってー、あめんぼだってーみんなみんな、生きているんだ友達なーんだー」
幼稚園にいる小鳥や池の鯉を見るのもすきで
実家の草むらにいるかまきりや、アリ、保育園の亀、実家の猫…
常日頃から生き物を見るのが大好きな幼児。
そんな幼児に「生き物は大事にしようね」なんて普段ほざいている大人のわたしが、目の前で生き物を殺した。
幼児にしてみたらこんなに混乱する大事件はない。
確かにムカデは危険だ…
しかし、命を奪う必要はあったのか?
だけどそのまま庭に放置するのも危ないし、かといって敷地外に逃せばご近所さんの家に行ってしまう可能性もある。
まだ人間にとっての害虫と、そうではない生き物について説明するにはあまりにも幼い。
そこでわたしは、ひとつの提案をする。
「幼児ちゃんを守るためとはいえ、ムカデを殺してしまってごめんね。ムカデのお墓を作ろう」
幼児はうん、とうなづき
花壇の土にムカデを埋めるわたしを見守った。
そして、できたお墓に一人で自然と手を合わせた。
この手を合わせる行為をわたしたちは「のんのん」と呼ぶ。
幼児にとってのじぃじを亡くした時に教えたもので、今ではじぃじの遺影の前やお墓の前、仏壇、その辺のお地蔵様にもこの「のんのん」をするようになった。
子育てをしているとさまざまな倫理観や壁にぶつかることが多いですが
梅雨前のよく晴れたこの日、ムカデを叩いたはずのわたしが逆に
ムカデとともに生きるとは…?という深すぎるテーマを幼児から叩きつけられたのでした。